東京港醸造の原点──「家訓」を胸に、「理念」を未来へ

Story Vol.05

東京港醸造の原点
──「家訓」を胸に、「理念」を未来へ

(文:専務取締役 齊藤かえで)

これまで、私たち株式会社若松には「会社理念」というかたちで整理された言葉はありませんでした。
その代わりに、社長・杜氏・そして私が、それぞれの立場から語ってきた想いや信念があります。
一見するとバラバラで、会社としての方向性が見えにくいと思われるかもしれません。
けれども実は、その異なる視点や価値観こそが、若松をここまで導いてきた大きな力だと私は感じています。
社長の経営者としてのまなざし、杜氏の酒造りにかける情熱
そして私自身の都市で文化を伝えていきたいという想い。
この三つが交わり、ぶつかり合い、ときに補い合うことで、いまの若松があります。
そして、その根底には代々受け継がれてきた家訓があります。

家訓
「商いは飽きない、お店は見せるもの

私たちの原点は、この家訓にあります。
若松は、代々この地で商いを営み、人々の暮らしと共に歩んできました。
何世代にもわたり積み重ねてきた経験と精神が、この言葉に込められています。
お客様がいつ訪れても新鮮な驚きや発見を感じられるように
飽きられることのない工夫を積み重ねていきます。
また、私たちにとって「お店」とは単なる販売の場ではなく、理念や世界観を体現する「見世」です。
空間全体を通じて、私たちの価値や文化をお客様に届けることを大切にしています。
こうした伝統を受け継ぎながらも、株式会社若松は自社ブランド「東京港醸造」の蔵元として
都市の真ん中に酒蔵を復活させました。
醸造に関する技術と品質の統括は杜氏・寺澤が担い、その確かな技を基盤に
若松は新たな挑戦を続けています。
それは単に酒を造るだけでなく、酒を通じて文化や歴史を体験できる場をつくることでもあります。
そして私たちは、過去から受け継いだ伝統を大切にしながら、常に新しい挑戦を続けています。
伝統を守るだけでなく、時代に合わせて革新し続けることこそが、「商いは飽きない」という精神の表れです。

経営理念
都市の真ん中で、伝統を受け継ぎ、固定概念にとらわれない新しい挑戦を続ける。

東京という大都市の只中で酒を醸し、その酒を中心に食の体験と空間資産を結びつけ
都市に生きる人々へ文化と体験を届けていきます。
杜氏が受け継いできた伝統の技を礎に、革新を取り入れることで日本酒の新しい楽しみ方を提案し続けます。
そして、酒・食・空間・文化が有機的に重なり合う場所を創り出し
都市に暮らす人々の日常に新しい彩りと感動を添えていきます。

経営ビジョン
従来の枠にとらわれない発想で、都市型ビジネスモデルを進化させる。
私たちは「都市にしかできない酒造り」と「都市から発信する文化の拠点」を確立し
伝統を守りながらも革新を恐れず、常に新しい挑戦を続けます。
酒・食・空間の三つが有機的に結びつくことで、
未来へと広がる唯一無二の都市文化を築いていきます。

終わりに
家訓を胸に、理念を未来へ。
伝統を守りながら、都市での新しい挑戦を続けていくこと。
今の私にとって、何より大切な使命です。
これからも若松の歩みを、一緒に見守っていただけたら嬉しく思います。